新型交付税 生み育てた所に配分を 「私の視点 いま自治体で」より
地方交付税の一つとして、現在の複雑な算定方式を思い切って簡素化し、面積と人口を基準に配分額を決定する「新型交付税」を来年度から導入することが検討されている。
過度に複雑というのは確かに問題だと思うが、かといって、面積と人口だけで本当に決めてよいものだろうか。
広ければそこに基礎的な財政需要が生じることを考えているからこそ、面積が基準に入っていると思うが、そうであれば、なぜ気象条件が入らないのか、ということになる。
そういう議論なしに、最初から面積と人口というのはおかしいのではないか。
昨冬の豪雪では、新潟県だけで100億円の除雪費を要している。豪雪地では、除排雪のほかに、なだれ防止対策などの課題もあり、これらを克服するための経費が必要である。
新型交付税は、その導入方法によっては、「条件不利地域」において、必要な財政需要に的確に対応できなくなる事態も懸念され、住民に大きな不安をもたらしかねない。地域の実情を踏まえた十分な検討を行うことが必要である。
新潟県は、一人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」は全国の中で低くはないが、より早く高齢化が進んでいる。
その最大の原因は、毎年春に大勢の若者が進学や就職のため、東京をはじめとした大都市圏へ出てしまうためだ。新潟県で生み育て、教育をして、優秀な人材として育った後に、都会に供出しているのである。
例えば、彼らが都会で払っている雇用保険料といったものは、ある程度、教育という観点も含めて、生み育てた所に配分するという考え方があってもいいのではないかと思う。
出生率で見ると、都会で生み育てるというのは難しい。物理的な問題があるからだ。例えば、60平方メートルくらいのマンションに住んでいて、果たして子ども2人を持てるのだろうか。
やはり、住宅にゆとりがあり、コミュニティーもあって、祖父母もいるといった環境が、子育てをするのにふさわしい。こうした環境が整った地方での子育てが進めば、出生率も上がり、日本全体の活力にもつながっていく。
現在だけのことを考えれば、面積と人口、それも人口に比重を置いて交付税を配分するということは、一見公平で、正しいように見える。
だが、時間軸を考えれば、人口が増えている所には、ますます多くの税金が投下され、人口が減っている所は、ますます貧乏になるということであり、都市への人口集中を助長する。
人口が集中すれば、ますます多くのインフラが都市に必要になることは目に見えている。
人口に偏った配分は、日本全体の少子化を加速し、将来の発展の可能性を大きく減少させることになりはしまいか。新型交付税の制度設計においては、地方定住を促進するようなインセンティブを盛り込むべきである。
(いずみだひろひこ 新潟県知事)
「2006年10月27日 朝日新聞『私の視点』掲載原稿」
